作物研究
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総説(特別講演)
イネにおけるシンク強度の改良による「登熟問題」へのアプローチ
加藤 恒雄
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 65 巻 p. 1-11

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抄録
イネ多収育種において育成されてきた,穎花数/穂を著しく増加させた極穂重型品種は,その穎花数/穂の増加が登熟上弱勢穎花である2次枝梗上穎花数の増加に専ら依存しているので,登熟程度の低下により期待された多収を達成できていない場合が多い.本総説ではこのような「登熟問題」を概説し,これの解決に向けたシンク強度改良の観点からの二通りの戦略を提案する.第一の戦略は,増加した弱勢穎花の登熟程度を向上させることである.登熟程度の遺伝的差異への関連が示唆されるAPS2,APL2およびSUT1座上の,良登熟型アレルと推定されるAPS2-2,APL2-2およびSUT1-2を活用することで,シンク活性を強化して登熟向上が図れると考えられる.第二の戦略は,登熟上強勢穎花である1次枝梗上穎花数を増加することで穎花数/穂が増加した新たな極穂重型遺伝子型を開発することである.選抜実験から,1次枝梗数/穂への選抜によってこのような穂型の得られることが示唆されている.このようなシンク強度の遺伝的改良およびソース強度改良を含む栽培技術面からの改善を包括的に組み合わせることにより,「登熟問題」の解決が可能と考えられる.
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© 2020 近畿作物・育種研究会
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