日本教科教育学会誌
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中学校におけるエイズの授業実践とその評価に関する研究
福富 和博木村 正治
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1994 年 16 巻 4 号 p. 173-184

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抄録
エイズは,今や社会問題であり,中学生にとっても無関心ではいられない事態になりつつある。そこで,中学生のエイズの知識及びHIV感染者に対する意識の実態を明らかにすると共に,その実態を元に授業を実践することで,中学校のエイズに関する指導の目標は何におくべきか,および授業実践はどうあるべきかを検討し,エイズに関する授業実践の有効性について評価することを目標とした。エイズ教育の課題を「エイズ感染予防」「HIV感染者との共生」と捉え,中学2年生を対象に3コマの授業実践をした。授業の効果をみるために,対象である2年生を授業実践を行うグループと,授業を行わないグループに分けた。両グループともに文化祭で他学年が演じたエイズ差別に関する劇を観賞させた。授業の実践前と実践後のエイズに関する知識や意識の調査と,授業中の学習シートおよび授業後の感想文から評価を試みた。さらに,VTRによる授業分析を行い以下の結果を得た。1.生徒は,AIDS・HIV感染者に対して偏見を持っており,その原因は偏った知識からくるところが大きい。2.中学生の感染予防教育は,セックスによる感染予防も必要であるが,血液による感染予防を主体にするのが実態に即している。3.生徒はエイズ患者・HIV感染を者を避ける傾向を示し,HIVの特性・感染経路の学習だけでその意識を変容させるのは困難である。4.共生教育では,患者・感染者の視聴覚教材により深い理解が得られ意識の変容を可能にさせる。5.中学校のエイズ教育は発達段階から,感染予防教育よりも共生教育に力点がおかれるべきである。
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© 1994 日本教科教育学会
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