日本教科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1784
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 渡邊 慶子, 小山 正孝
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,1つの定理に対する多様な証明を生かした相互作用を分析する視点を設定することである。本稿では,数学の授業で生じる証明の多様性を生かした相互作用の視点として,Voigt(1995)による2つの視点「相互作用のパターン」と「相互作用におけるテーマ的パターン」を援用し,前者に「比較パターン」と「議論パターン」の2つ,後者に「証明の方法」と「証明の構造」の2つを設定して視点の枠組みを提案した。その枠組みを用いて,中学3年の1つの証明問題を取り扱った授業実践を分析した。その結果(ⅰ)多様な証明を生かした複雑な相互作用を比較パターンと議論パターンに区別して分析できること,(ⅱ)相互作用におけるテーマ的パターンを証明の方法と構造に区別して分析することで,生徒たちがどのように証明を理解していくのか,別の証明をどのように生成していくのかを記述できることが明らかになった。

  • 石井 幸司, 鈴木 直樹
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,保護者の体育科に対する認識に注目をし,その形成プロセスについて明らかにすることである。そこで,学習指導要領で示されている体育科の目標と比べて,認識に相違がある小学校第5・6学年の子供をもつ保護者10名を対象として半構造化インタビューを実施した。得られたデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析をした。

     その結果,保護者の体育科に対する認識は,「学生時代の経験」が土台となり,十数年から数十年後に,「保護者としての体育科の見方」というプロセスを経て形成された。特に,学生時代に相対的な技能への称賛を受けてきた経験が,保護者の体育科に対する技能重視の認識を強化する要因であることが明らかになった。その認識を再形成するためには,学校が保護者に子供の体育科の学習状況を適切に伝えることに加え,保護者と子供間で体育科に関する社会的相互作用を生み出すことの重要性が示唆された。

  • 詫間 千晴, 鈴木 明子
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     2017年,2018年に改訂された小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領の中で,教育の新たな方向性としてコンピテンシー・ベイスの教育を推進していくことが示された。先行研究から,家庭科と他教科との比較を通して,教員志望学生の家庭科に対する教科観が深まることが明らかとなっている。そこで,本報告では,教員養成系大学院において実施された他教科と家庭科を比較する機会を設けた授業が,授業参加後の大学院生の家庭科に対する教科観や,家庭科教員となった現在の教育実践や教科観に与える効果を明らかにすることを目的とした。その結果,大学院での授業経験が家庭科教員志望大学院生の教科観に影響を与え,家庭科の本質的な意義に対する理解が深まったことが明らかとなった。また,教員4年時の教科観や指導観においてもその効果が継続している実態を捉えることができた。

  • 鈴木 千春, 小林 裕子, 村田 晋太朗, 永田 智子
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     小学校家庭科における家族の学習教材(絵本とワークシート(WS))を援用して,生活科における「家庭と生活」の授業実践をおこなった。本稿はその学習効果を示したものである。WSは絵本の中の「家族の一員」になりきって「吹き出し」に書き込む形式のWS-Ⅰと,生活科を学んできた家族をよくする「アドバイザー」の立場で「罫線」に書き込む形式のWS-Ⅱの2種類を用意した。結果は,いずれのWSを使用しても家庭生活をよりよくするために,【手伝う】カテゴリに関する内容を記述する児童が多く,「家族の一員として協力する必要性が分かる」という学習目標は概ね達成できた。記述の特徴は両群共に抽象的ではあるが,WS-Ⅰが相手に命令する,WS-Ⅱが相手に提案する表現が多くなることが分かった。事後アンケートでは,両群共に【協力】カテゴリを表す言葉を記述した児童数が増えた。特に【協力】カテゴリ内の「手伝い」の記述数が最多になるなど学習効果が認められた。特にWS-Ⅰ群はWSに数多く記述できていたことにより学習に効果的であったことが推察された。

  • 中西 裕也, 磯﨑 哲夫, 林 武広
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究は,文脈を基盤としたアプローチの方略や評価に焦点を当て分析・検討を行い,防災教育における文脈を基盤としたアプローチを用いた単元を開発し,災害に備える態度の育成と科学についての知識の必要性を認識させることを意図した授業実践を試行した。その結果,文脈を基盤としたアプローチの特徴として,学習の文脈を規定し関連する科学的知識と共に必要に応じて取り入れる考え方を中心に,学習内容の螺旋型配列や,科学的考えを点在的に配置し繰り返し学習に用いるドリップ・フィードアプローチの有効性が確認された。また,授業実践前後によるアンケートの分析から災害に備える態度と科学についての知識の必要性の認識の変容を考察した。その結果,態度の変容は,「調べる」,「知る」,「話し合う」との単語の繋がりの変化や広がりに現れること,これらの単語のネットワークが再構成され,態度の育成に寄与することが推察された。科学についての知識の必要性の認識は,違う立場の人と理科の見方・考え方をもとに話し合うことで向上することが推察された。

  • 伊東 哲, 町田 伊玄
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 46 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2023/06/23
    公開日: 2024/07/21
    ジャーナル フリー

     本研究は「書くこと」の学習前にある小学校5年生児童が,英語の文字をどれだけ書字できるのかを調査するとともに,児童の書字に基づいて,児童を類型化し,小学校5年生から実施される文字指導に示唆を得ることを目的とした。調査の結果,大文字においてはZQYCEAの正答率が高く,DKPには困難がみられた。小文字においてはasocの正答率が高く,fqjlの書字には困難が見られた。また,児童の書字に基づいたクラスター分析の結果,児童は5つのグループに分けられた。すでにほとんどの文字を正しく書ける児童の群がある一方で,小文字の形に関する知識,また四線の使い方について課題が見つかる児童の群が確認された。実際の文字指導においては,まずは文字の音についての知識を充実させ,特に小文字に慣れ親しませることが必要であることが示唆された。

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