日本教科教育学会誌
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 中嶋 亮太, 川崎 弘作
    2021 年 44 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は,理科授業において「知識-過程」の視点から行う複数の目標設定を取り入れた自律的な学びを促進するための学習指導法を考案し,その効果を検証することである。このため,理科授業において,知識に関する目標と併せて,知識を獲得する過程に関する目標を 設定させるために,児童の自己評価に基づいた目標設定を促す学習指導法を考案した。加えて,考案した学習指導法の効果の検証を行うため,自律的な学びに影響を与える「動機づけ信念」 を測定する質問紙を作成した。そして,考案した学習指導法を基に,小学校第4学年を対象に 2019年9月と11月にそれぞれ授業実践を行った。その結果,本研究で考案した学習指導法は,自律的な学びに関わる感情の喚起には有効な事例といえる結果が得られた一方で,自律的な学 びの促進に有効であったといえる結果は得られなかった。
  • ―教科学習で涵養されるコミュニケーション力に着目して―
    小林 龍柱, 榊原 範久
    2021 年 44 巻 3 号 p. 15-28
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    急速な社会の進展に伴い,学校教育においてコミュニケーション力の育成が求められている。 本研究では,コミュニケーション力の育成を目的とした学習者用のルーブリックを作成し,それを用いて小学校社会科において授業実践を行った。学習者が単元を通してルーブリックを継 続的に利用し自己評価を行った結果,ルーブリックの評価に変化が見られた。学習者は意識的 にルーブリックを利用し,話し合い活動を円滑に進める姿や,自分自身の苦手とする項目を認 知したことが示唆された。また,理想的なコミュニケーションのあり方を意識しながら活動を 行うことに繋がり,学習者のコミュニケーション力の向上が示唆された。
  • ―構成主義と記号論の相補的利用―
    上ヶ谷 友佑, 和田 信哉, 中川 裕之, 影山 和也, 山口 武志
    2021 年 44 巻 3 号 p. 29-42
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    構成主義の授業論において活用されている数学的思考のモデルは,しばしば数学的内容の概 念分析や少人数での問題解決過程の分析に基づいて構築されたモデルであり,必ずしも,授業 での多人数でのコミュニケーションを考慮したモデルではない。構成主義の授業論には,多人 数の相互作用だからこそ生じ得る考察対象の存在論的様相を想定した授業分析方法論が必要で あると考えられる。そのため本稿では,構成主義と記号論を相補的に併用する分析方法論の提 案を目的とする。本稿では,主として次の2点を提案する。第一に,記号論における知覚可能 な媒体を共通基盤とした,考察対象の存在論的様相についてのモデル構築。第二に,構築され るモデルに一意性がないことを肯定的に捉えた,多様な観点からの同じ現象の複数回分析。このようにして構築された複数のモデルは,対比するというアプローチを通じて活用され得る。 また本稿では,本稿の提案が構成主義および記号論の双方に対して理論的示唆を有することを指摘した。
  • ―接続用知識に着目して―
    石田 靖弘, 雲財 寛, 稲田 結美, 角屋 重樹
    2021 年 44 巻 3 号 p. 43-52
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,小学校第6学年「月の満ち欠け」の単元で,接続用知識を介した自然事象の理解といった観点から指導を行うことによって,「月の満ち欠け」に対する理解が向上するか否かを明 らかにすることを目的とした。この目的を達成するため,接続用知識を介した自然事象の理解 といった観点から指導を行ったクラスと接続用知識の指導が見られなかったクラスを対象に, 授業前後の質問紙調査を実施し,比較検討した。その結果,前者のクラスは後者のクラスと比 較して,難易度「低」「中」の設問では正答者数が有意に多かった。また,難易度「高」の設問では両クラス間に差は見られなかったものの前者のクラスにおいて接続用知識を使って解答し た児童が多く見られた。 以上により,接続用知識を介した自然事象の理解といった観点からの指導は,児童の理解の向上に寄与することが明らかとなった。
  • ―3教科の模擬授業への参加による教科観の変容―
    森 千春, 鈴木 明子
    2021 年 44 巻 3 号 p. 53-63
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    平成29,30年版学習指導要領では,社会の変化に対応できる資質・能力を身に付けるために,子どもたちの視点に立って各教科等のつながりを捉え,専攻教科の指導や「カリキュラム・マネジメント」に生かす必要があると明示された。先行研究から,他教科を専攻する学生間の交流により,他教科と専攻教科に対する理解が深まることが明らかとなっている。そこで,本報告では,家庭科教員養成課程に在籍する学生に,「エネルギー問題」を共通テーマとした家庭科, 社会科,理科の3教科の模擬授業及び3教科を比較するマッピングに参加してもらい,参加した学生の家庭科に対する教科観の変容を捉えることを目的とした。その結果,家庭科と他教科を比較する機会を設けることを通して,家庭科は他教科で学習したことを生活の中で具体的に捉えることができる教科であることや根拠をもつことの必要性などに気づき,学生の教科観が 変容する様子が見られた。
  • ―どのように役立つと思うかについての自由記述の分析から―
    三和 秀平
    2021 年 44 巻 3 号 p. 65-75
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は小学生が算数,国語,理科,社会,英語の各教科に感じる有用性について整 理することであった。小学校5,6年生を対象に質問紙調査を行い,各教科の有用性認知の評価 を求めたところ,算数,国語,英語においては理科や社会よりも有用性を高く評価していた。 また,算数以外の科目では得意な程度との関連がみられ,得意だと感じる科目は有用性を高く評価していた。さらに,各教科の内容が日常生活や将来にどのように役立つと思うかについて自由記述で回答を求めた。その結果,算数は買い物などのお金の計算などに,国語は言葉の読 み書きやコミュニケーションなどに,理科は実験的な考え方や危険の回避などに,社会は歴史 や地理の理解などに,英語は外国人とのかかわりなどに,それぞれ役立つという回答が得られた。 ただし,具体的な記述には乏しく,まだ十分に有用性を理解できていない可能性もうかがえた。
  • ―1950年代から1960年代にかけての体育教師の「ゲートキーピング」に着目して―
    岡田 悠佑
    2021 年 44 巻 3 号 p. 77-89
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/07/03
    ジャーナル 認証あり
    本稿の目的は,戦後日本の学校体育の成立過程において,「冬季体育」に対する体育教師の指導の内実を「ゲートキーピング」に着目して明らかにすることである。その際,1950年代から 1960年代の雑誌「体育科教育」における「冬季体育」に関する記事を分析対象とした。「冬季体育」の問題は,降雪雨によって施設が制限されるという問題と,寒さによる子どもの運動意欲の低下という問題の二つに整理することができた。そして,施設の制限の問題に対しては,校庭,体育館,教室を利用するそれぞれの場合に応じた対処方法が確認できた。校庭を 利用する場合は,校庭の雪上の使用と校庭の水はけをよくするという二つの方法が確認できた。 体育館を利用する場合は,体育館で実施可能な運動の選択,限られた空間の効率的な利用,学習形態の工夫という三つの方法が確認できた。教室を利用する場合は,限られた空間の効率的な使用と実施可能な運動の選択という二つの方法が確認できた。子どもの運動意欲の低下の問 題に対しては,防寒着の着脱,身体活動量を増やす授業づくり,そして基礎技術の習得を意図 した授業づくりの三つの対処方法が確認できた。さらにこれらの対処方法は,「冬季体育」の問題への対策として授業の内容及び方法の次元で考えられたものであったが,「冬季体育」に積極 的な意味を見出す対処も採られていたことが確認できた。具体的には,防寒着の着脱を通した自己管理能力の育成,運動の知的理解の促進,そして授業の肯定的雰囲気づくりの三点である。 これらは,「冬季体育」の問題への目標,方法の次元での積極的な意味づけによる対処であった。これらの取り組みは,どのような環境でも体育授業を成立させようとする試みであり,戦後日本の学習指導要領を介した「教育機会の均等」という理念の実現を支えた具体的な取り組み と解釈することができる。さらに,環境要因を前提とした体育授業のあり方も検討していく必 要性を示唆した。
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