抄録
本研究は,体育科教育で形成する認識能力とその方法についての考察を行うものである。とりわけ,以下の3点についての考察を行った。(1)体育科教育に固有の認識方法とその特徴について(2)技能形成と認識能力形成の関係について(3)認識能力形成のための指導内容の考え方と形成方法についてその結果,以下のことを明らかにした。第一に,体育科教育に独自の認識方法は運動を介した認識であり,認識主体である身体が同時に認識対象であることに特徴を持つ。第二に認識能力形成と技能形成は弁証法的関係にある。第三に,認識能力を形成するためには,単に「できる」ことを追求し続けるのではなく,「できる」ことを使いつつ,子どもがその構造をもとに多様に変形しながら自らの身体運動を分析一総合できるように課題を提示することが必要である。また,教師が教えたい内容を具体的条件,とりわけ子どもの認識発達の系統,に合わせて構造化しなければならない。