2003 年 26 巻 1 号 p. 1-10
説明的文章の学習指導は,学習者の既有知識を大切にした学習者側からの実践理論の究明が大きな課題である。本稿では,学習者の側からの研究を進めてきた研究者のうち森田信義の理論と,説明的文章の教材論から指導理論を開いてきた渋谷孝の理論とを取り上げ,比較検討した。その結果,説明的文章の学習指導の新たな可能性として,<他者>との<対話>を提案する。さらに,方法論として,「他者の身体」と「身体を通した読み」とを一元論として学びを形成する実践装置を提示した。「他者の身体」の働きかけによって起こる<他者>との<対話>が,さらに,自らの暗黙知における身体性を伴った「身体を通した読み」を実現したとき,これまでの論理や文章構成を与え,授ける形式的な学びから,学習者が実感として自らの既有の世界・論理・構造を捉える技能を再構成することのできる学びの可能性が明らかとなった。