抄録
『日本家庭科教育学会誌』と『日本教科教育学会誌』に掲載されている家庭科教育学の研究論文を対象に,教科教育学の視点から研究動向を把握し,今後の課題と展望の提示を試みた。その結果,以下の諸点が明らかになった。1)家庭科の教科理論は初期に探究され,歴史研究によって検討されている。特に家庭科が男女共学必修になった意義は大きい。2)米国を中心とする家庭科教育の研究により,新しい視点や領域の拡大およびパラダイムの変換が行われてきた。3)社会変革に伴い,子どもの家庭生活環境が変化し,近年,生活実践力の育成が求められている。4)子どもの現実の生活世界の体験と学校教育をつなぐ学びが授業研究で明らかになりつつある。5)家庭科教師教育は立ち後れており,教師の力量の育成が模索されている。課題は多いが新しい構想も生まれつつある。