日本教科教育学会誌
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数学の授業における考察対象の存在論的様相の分析方法論
―構成主義と記号論の相補的利用―
上ヶ谷 友佑和田 信哉中川 裕之影山 和也山口 武志
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2021 年 44 巻 3 号 p. 29-42

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抄録

構成主義の授業論において活用されている数学的思考のモデルは,しばしば数学的内容の概 念分析や少人数での問題解決過程の分析に基づいて構築されたモデルであり,必ずしも,授業 での多人数でのコミュニケーションを考慮したモデルではない。構成主義の授業論には,多人 数の相互作用だからこそ生じ得る考察対象の存在論的様相を想定した授業分析方法論が必要で あると考えられる。そのため本稿では,構成主義と記号論を相補的に併用する分析方法論の提 案を目的とする。本稿では,主として次の2点を提案する。第一に,記号論における知覚可能 な媒体を共通基盤とした,考察対象の存在論的様相についてのモデル構築。第二に,構築され るモデルに一意性がないことを肯定的に捉えた,多様な観点からの同じ現象の複数回分析。このようにして構築された複数のモデルは,対比するというアプローチを通じて活用され得る。 また本稿では,本稿の提案が構成主義および記号論の双方に対して理論的示唆を有することを指摘した。

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