日本教科教育学会誌
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シンポジウム
教師教育における教科教育学(研究)の寄与の可能性
臼井 智美
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2022 年 44 巻 4 号 p. 101-107

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抄録

教員の教職アイデンティティが専門教科に強く規定されていることにより,学校で教科を越えた教員間の学びや子どもの学力向上が実現されにくくなっている。教科教育学の研究知は,「教科」と「子ども」をつなぐ教員次第でその意義も有用性も左右されるため,教師教育との関連の中で再構成していく必要がある。具体的な実践への寄与として,子どもの教科の学びの基盤となる学習言語力の育成に目を向け,各教科が自明視してきた「教科の学びの言葉」の特徴や意味を明らかにし,教科間での類似点や相違点に関する知見を協同で蓄積していくことが挙げられる。そして,その知見を教科教育学研究者が教師教育の中で提供していくことにより,教員の同僚間でのコミュニケーションを妨げる「教科」に依拠した教職アイデンティティからの脱却や,授業をする力量だけでなく授業を通して子どもの力を実際に伸ばす力量の形成を支える専門職組織(PLC; Professional Learning Community)の構築にも寄与できる。

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