本稿では,戦後小学校国語教科書に掲載されたヘレン・ケラーを被伝者とする伝記教材群は,どのような面に焦点が当てられてきたのかを明らかにした。ヘレン・ケラーを被伝者とした伝記教材は,戦後から2022年度現在までの間に出版されてきた小学校国語教科書(第六期国定国語教科書と検定教科書146種)のうち,のべ21種で採録されており,継続して採録されたものを除いた9種の教材を検討対象とした。これらの教材の本文のプロット及び学習の手引きを経年的に比較・考察した結果,ヘレン・ケラー伝記教材は,ヘレンがサリバン先生との出会いによって人生を変えられた人物であることや,苦難に負けず努力する人物であること,また人との出会いを活かした人物であること,そして「ことば」の力を学習者に教えてくれる人物であることに焦点が当てられた教材として展開されたことが明らかになった。