本稿の目的は,小学校国語科における動画を用いた学習の動向と今後の課題を明らかにすることである。学習指導要領解説や教科書,動画を用いた実践事例を対象として取り上げた結果,動画コンテンツが用意されている教科書教材はあるものの,子供が日常的に楽しみながら視聴している動画とは異なる部分があり,補助資料としての位置付けであることが明らかとなった。 また,収集した実践事例(88本)のうち85本が動画を補助的に用いた実践であった。一方で,動画そのものを読解対象とした実践事例(3本)も確認でき,それらを比較検討した。その結果,動画は子供の興味・関心を誘発するだけでなく,ことばの生まれる場に子供を立たせることのできる可能性を秘めた媒体であることが示唆された。今後は,子供の日常生活に目を向け,ことばの生まれる場に子供を立たせることができるであろう動画の発掘及びその可能性の探究,換言すれば,動画の学習材化研究が必要となる。その際,本稿で明らかとなった動画の選定要件や視聴方法が手がかりとなると考える。