2019 年 21 巻 1 号 p. 91-110
サンゴ群集のおもな死滅要因となっているオニヒトデ大量発生の抜本的な対策を検討するため,沖縄県は,2012年から2018年にかけて「オニヒトデ総合対策事業」を実施し,大量発生要因に関する複合的な調査研究と,沖縄島・慶良間諸島を対象とした大量発生予測のためのモニタリングおよび実証調査を行った。その結果,1)オニヒトデ個体群の形成・維持に有効な幼生分散は比較的ローカルなスケールの可能性が高いこと,2)オニヒトデ幼生はおもな餌である植物プランクトンの他にも,デトリタスやサンゴ粘液といった有機物を補助的な餌として利用できること,3)沖縄島の沿岸海域では,降雨により陸水が流出すると植物プランクトンなど幼生の餌が増加しやすいこと,4)着底後,半年前後の稚ヒトデの密度をモニタリングすることにより2年後の成体個体群の増加を予測しえることがわかった。これらをふまえ,今後のオニヒトデ対策として,短期的には範囲を限定した繰り返し駆除と稚ヒトデモニタリングによる大量発生予測,長期的には沖縄島沿岸の水質改善が提案された。