2012~2014年にかけて旧オオトゲサンゴ科と旧キクメイシ科を中心に分類体系が大きく変更され,それ以降も毎年分類の変更に伴う学名の変更が報告されている。最近ではRowlett(2020)によって多数の科や属の分類の変更が報告された。このように,分類体系の変更が激しい現状において,サンゴ研究者は使用する学名を最新の情報を踏まえて把握する必要がある。しかしながら,分類学に深く関わっていない研究者にとってその作業に時間を費やすことが困難である。そこで,今回は,2016年以降の分類改変に伴う学名の変更があった主なイシサンゴ類の種や高次分類群について紹介する。
近年,生態系活用型の防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)が国際的に注目されている。サンゴ礁は外洋からの高波を減衰させるため,天然の防波堤として沿岸災害のリスク低下に重要である。しかし,サンゴの白化などによってサンゴが作り出す立体構造が失われると,海底摩擦等による波浪エネルギーの減衰機能が低下するため,沿岸災害リスクが増加することが考えられる。一方,今後の海面上昇はサンゴ礁の上方成長を促す可能性があるため,波浪エネルギーの減衰に重要な要因であるが,将来の海面上昇とサンゴの成長,サンゴ礁の上方成長の関係についての科学的知見は少ない。そのため,早急に科学的知見を蓄積してサンゴ礁が持つEco-DRRの重要性を明らかにすることが必要である。Eco-DRRは観光や教育,都市計画など社会が求める多様な分野に関係している。サンゴ礁を活用したEco-DRRの研究はまだ始まったばかりであるため,社会実装に向けてどのような取り組みが出来るか検討することがこれから必要となる。
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