抄録
塊状の造礁サンゴ Favites sp. と Porites sp. の生育するメソコズム (隔離水界) で1998年の白化現象の初期段階と後期段階における有機炭素生産量 (光合成-呼吸量) と無機炭素生産量 (石灰化-溶解量) を測定した。海水面では大気-海水間のCO2フラックスを直接測定し、メソコズムでの炭素収支を算出した。
純有機炭素生産量は白化初期段階の15.8mmol m-2 d-1から白化後期段階の9.5mmol m-2 d-1に減少した。純無機炭素生産量は白化初期段階の11.2mmol m-2 d-1から白化後期段階の-7.0mmol m-2 d-1に激減した。これは昼間の石灰化量の減少と夜間の溶解量の増加によるものであり、炭酸塩の溶解を示す。大気-海水間のCO2フラックスは白化初期段階が-1.8mmol m-2 d-1、白化後期段階が-1.1mmolm-2 d-1であり、どちらも大気から海水へCO2が吸収された。
白化の初期段階と後期段階でP/R比 (=1.2) はほとんど変化しなかったことから、白化によって褐虫藻の光合成活性は変化しないことが示唆された。サンゴの白化により石灰化速度は光合成速度に較べ著しく減少した。白化はサンゴにダメージを与え、サンゴ-褐虫藻の共生系の炭素代謝に大きく影響した。