日本作物学会紀事
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品質・加工
北部九州におけるコムギ粉の最高粘度の年次間変動とその登熟ステージ別の降雨との関係
佐藤 大和内村 要介尾形 武文松江 勇次陣内 暢明
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2004 年 73 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

登熟期間中の降雨に対しても安定して最高粘度が優れる高品質コムギの生産技術を確立するために, 最高粘度の年次間変動の実態と登熟期間中の降雨が最高粘度に大きく影響を及ぼす登熟ステージを明らかにした. 最高粘度は, 収穫年次, 播種時期および品種の違いによって大きく変動し, 播種時期が早いほど最高粘度が低くなる傾向が認められた. また, 品種間では秋播性程度の高いイワイノダイチは低いチクゴイズミに比べて, 年次, 播種時期にかかわらず最高粘度は安定して高かった. 最高粘度と登熟期の気象との関係では, 積算降水量との間に負の相関関係が認められ, 特に登熟後期の積算降水量の影響を大きく受けた. さらに, 登熟後期中, 成熟期前5~6日の降雨によって最も影響を受けた. 一方, 登熟前期と中期では明らかな関係は認められなかった. 以上の結果から, 登熟期間中の降雨に対して安定した最高粘度のコムギ粉を生産するためには, 登熟後期の雨濡れによる品質低下の小さい品種の育成, 選定が重要であるとともに, 成熟期前5~6日の降雨が少ない5月中に収穫が可能な早生の秋播型コムギ品種を用いた作期前進化技術が有効であると考えられた.

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© 2004 日本作物学会
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