日本作物学会紀事
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品質・加工
成熟期の降雨処理によるコムギの子実水分含有率の変化と品質低下の品種間差
内村 要介佐藤 大和尾形 武文松江 勇次
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2004 年 73 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

成熟期に降雨に遭遇しても小麦粉の品質低下が小さいコムギ品種育成のための基礎的知見を得る目的で, 成熟期に降雨処理を行い, 品質低下の品種間差を明らかにするとともに, 品質低下と穂の形態および小麦粉の特性との関係を考察した. コムギは成熟期の降雨処理によって倒伏程度が大きくなり, 子実の外観品質, 千粒重, 容積重およびフォーリングナンバーが低下したものの, その低下程度に品種間差が認められた. 農林61号は倒伏程度が大きかったにもかかわらず, 雨回避区に対してフォーリングナンバーの低下が認められず, 小麦粉の色相の低下程度が供試品種の中で最も小さかった. 穂の形態からみて, 農林61号は他の品種に比べて外穎と内穎との隙間が無く子実を覆っていることが, 降雨による子実の水分含有率の増加を少なくさせているのではないかと推測した. また, 農林61号は加水した小麦粉の24時間後の色相の低下が, 供試品種の中で最も小さかった. 従って, 雨濡れによる品質低下程度の品種間差異には穂の形態と小麦粉の理化学的特性が大きく関与している可能性が示唆された.

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© 2004 日本作物学会
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