日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
常温下に於けるラッカセイの莢つき種子の長期発芽寿命
前田 和美
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2004 年 73 巻 4 号 p. 457-462

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抄録
1964年から常温(1961~1990年の月別平均気温:5 . 5~27℃)下で保存してきたラッカセイ198品種の莢つき種子の発芽率を1986年,1992年および1993年に調べた.保存には,50~100莢をクラフト紙または寒冷紗製の袋に分けた種子の1容器あたりの量16~20 kgに対し,乾燥剤として塊状生石灰をそれぞれ約5kgおよび2 kgを封入(年1回更新)した半密閉容器(容積144リットル,~1972年)と完全密閉容器(75リットル,1973年~)を用いた.両容器内の平衡相対湿度が約23%および14%における種子の平衡水分含量は約6%および3%で大,小粒性品種間の差異は小さかった.15年~28年間保存した16品種が80~100%の発芽率を示したが,その13品種が小粒種のスパニッシュ・タイプ,2品種が中粒種のバージニア・タイプ,そして1品種が亜種間交雑起源の品種であった.常温(2~38℃,23~25℃)下の保存で,水分含量4%以下あるいは3 . 32%の剥き実種子の寿命が8年および11年という報告があるが,本報の結果は,とくにスパニッシュ・タイプの莢つき種子の発芽寿命が常温下でも3~6%の水分含量ではさらに長いことを初めて示したものである.種子寿命の品種間差異や発芽力の保持における莢(果皮)の役割や,油料用小粒種の栽培が多い温・熱帯地域における生殖質の低コスト・小規模保存法としての利用についてさらに検討の必要がある.
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© 2004 日本作物学会
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