日本作物学会紀事
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栽培
イネの形態形成の規則性に起因する発育ステージの変異を推定する方法
神田 英司鳥越 洋一小林 隆
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2005 年 74 巻 3 号 p. 276-284

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抄録
水稲冷害早期警戒システムで作成した発育モデルを拡張し, 圃場内における有効穂や穎花が減数分裂期などの特定の発育ステージにある割合を推定する手法を作成した. この手法は発育に内在する形態形成の規則性に起因する変異を対象とし, 移植時の個体葉齢変異, 有効穂の幼穂形成期変異, 穎花の開花日変異を発育モデルの初期値とすることで取り扱う. この手法を1999年, 2001年, 2003年の東北農業研究センターと青森県十和田, 八戸, 青森の生育診断圃場に適用し, この手法の実用性を検討した. 1穎花の危険期間を設定して危険期にある穎花割合を推定すると, 穎花レベルの危険期のピークは有効穂レベルの減数分裂期のピークよりも2~3日遅かった. また, 冷害年である2003年は冷温で発育が緩慢となり, 減数分裂期の有効穂, 危険期の穎花ともに圃場に存在している期間が長くなった. 穎花レベルの開花期のピークも有効穂レベルの出穂期のピークよりも2~3日遅かった. 出穂および開花期に冷温となった2001年は出穂する穂および開花する穎花が圃場に存在する期間が冷害年の2003年よりも長くなった. この手法で成熟期を推定すると, 2001年や2003年のように冷温で登熟が遅延したときに, 圃場レベルで成熟期に未達でも有効穂や穎花レベルでは一部で成熟しているとみられた. 障害型冷害の危険期冷却量を求めたところ, 1999年は不稔発生は少ないが, 2001年, 2003年は冷却量が大きいと不稔歩合が大きかった. この手法で圃場内の発育の変異を推定することができた.
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© 2005 日本作物学会
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