早播き栽培に適した品種特性を明らかにすることを目的として, 早播きした秋播性コムギ系統西海185号の生育・収量を, 秋播性コムギ品種イワイノダイチ, 春播性コムギ品種チクゴイズミと3カ年にわたって比較した. 西海185号は, イワイノダイチと同様に, チクゴイズミと比較して二重隆起形成期や茎立ち期は遅いが, 出穂期・成熟期はほぼ同じであった. これに伴い, 西海185号は, 最高分げつ期の茎数が多い, 1穂小穂数が多い, 上位節間が相対的に短い, 開花期のLAIが大きいなど春播性のチクゴイズミよりも秋播性のイワイノダイチと類似した生育特性が認められた. 西海185号の収量・収量構成要素をみると, 穂数はイワイノダイチよりやや少なくチクゴイズミより多く, 1穂粒数はイワイダイチよりやや多くチクゴイズミとほぼ同じで, 千粒重は他の2品種よりも小さく, 子実重は他の2品種と同等であった. また, 西海185号は開花期以降にフレッケンの発生が顕著に認められたが, フレッケンの発生は登熟期間の乾物生産を抑制することはないと考えられた. 以上の結果から, 早播き栽培においては, 本研究で用いた3品種の間で生育特性に様々な差異が認められるが, 秋播性コムギと春播性コムギの間には収量性に大きな違いはないと推察された.