抄録
根粒超着生ダイズ品種作系4号は, 窒素固定能と葉面積当りの光合成能が高いことから多収のポテンシャルを持つと期待されているが, 宮城県において慣行的に栽培した場合, 初期生育が劣ることがわかった. 単位面積当りの初期生育量の確保には, 単位面積当りの個体数で補完する意味で密植が有効と考えられるため, 標準区とその2倍の栽植密度の密植区を設けて栽培し, 親品種のエンレイおよび根粒非着生系統En1282と生育・収量を比較した. 試験1(2003年, 鳴子)では, 密植により, 乾物重と葉面積指数(LAI)は品種・系統にかかわらず有意に増加したが, 収量は作系4号でのみ有意な増加がみられた. 試験2(2004年, 仙台)では, 密植により, 作系4号の乾物重およびLAIは有意に増加したが, 収量は3品種・系統とも有意な増加はみられなかった. 供試した3品種・系統の収量は, 標準区と密植区のいずれも, エンレイ>作系4号>En1282の傾向がみられ, 開花期と子実肥大期の乾物重の差を反映していた. 節数, 莢数, 粒数および結実率などの収量構成要素について, エンレイと作系4号を比較すると, 主茎では両品種とも密植により増加が顕著であったが, 分枝ではエンレイのみで明瞭な増加がみられ, 作系4号では減少した. 以上のように, 作系4号に対する密植の効果は認められたが, 収量はエンレイを上回ることはなかった. 作系4号は, 密植した場合に分枝の成長が劣ることから, 多収化のためには主茎により大きく依存した栽培条件が必要と推測される.