食味官能試験の精度を確認するために, 各食味評価項目(総合評価, 外観, 香り, うま味, 粘り, 硬さ)の識別性, 各パネル構成員の評価値と全体の評価値平均との相関と品種識別能力との関係, あきたこまちとコシヒカリの識別性について解析した. 5回の試験について各評価項目別に品種を要因とした分散分析の結果, 総合評価, 外観, うま味, 粘り, 硬さは全ての回で品種間の差が1%水準で有意であり, 品種間差の識別性が高かったが, 香りは他の項目に比べて品種間差の識別性が低かった. 外観, 香り, うま味, 粘りは総合評価との間には有意な正の相関がみられたが, 硬さと総合評価との間には有意でない負の相関がみられた. 重回帰分析の結果, 総合評価はうま味によって多くが説明された. 食味総合評価値が異なるコシヒカリ, あきたこまち, コチヒビキをサンプルとして含む3回の試験に参加した15名のパネル構成員について, これら3品種の総合評価値の分散分析のF値を検討すると, 15名のうち5名が5%水準で有意であった. また, 品種の識別性が高いパネル構成員の評価値は, 全体の平均値との相関が高かった. さらに10名のパネル構成員による5回の試験において, コシヒカリとあきたこまちの2品種の分散分析を行ったところ, 半数の5名のF値は5%水準以下で有意であった. これらの結果から, 当水稲品種育成地で行っている食味試験は, 十分な精度を有することが示された.