秋田県大潟村での水管理体系をみると,コンバイン収穫に備えて7月初めの幼穂分化期頃から落水され,水稲は土壌水分が少ない状態下で生育し,体内水分含量が減少して気孔は閉じ気味となり,光合成速度が低下して,収量にも影響が生じると考えられる.しかし収量は他の米産地以上に高い.本研究では,大潟村水稲の気孔開度と個体群生長速度(CGR),純同化率(NAR),葉面積指数(LAI)および乾物生産との関係について,近隣に位置して土壌や気象条件が似ており慣行法で水管理されている秋田県五城目町の水稲と比較した.最高分げつ期(7月9日頃),出穂期(8月9日頃),出穂2週間後(8月23日頃)に改良浸潤法によって気孔開度を測定した.その結果,最高分げつ期を除く測定時期で大潟村の気孔開度は五城目町よりかなり小さかった.しかしながらCGRは五城目町より大きかった.以上から,晴天で湿度が低く蒸散が多い日には,水稲は気孔を閉じて体内水分を低下させないように適応し,それによって1日中高い光合成速度を維持し,ひいては高い乾物生産を実現していると推察され,これらから考えられる水稲栽培のあり方の概略を提示した.