日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
グラフィカルモデリングを用いた因果分析による77年間継続した 四要素施用区における玄米収量と各施用要素等の因果関係
籾井 隆志
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2010 年 79 巻 4 号 p. 513-517

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抄録

愛知県農業総合試験場では,1926年から水稲の四要素(窒素,りん酸,カリ,石灰)及び堆肥連用試験と各要素連年無施用の試験を行っている.2002年までの77年間における試験結果において,これまで重回帰分析により,各施用要素等の効果から各試験区の収量の予測式を求め,また各施用要素等の収量への影響について考察が行われたが,必ずしも各施用要素等と収量との因果関係は明確になっていない.そこで,連用試験の中でも基本となる,窒素,りん酸,カリ,石灰が施用された四要素区について,年次経過が各施用要素等の効果に及ぼす影響,また各施用要素等が収量へ及ぼす影響についてグラフィカルモデリング(GM)を用いた因果分析を行った.分析の結果,説明変数間の連鎖独立グラフを作成することができ,各変数が収量へどのように影響を及ぼしているかについての因果グラフ(連鎖独立グラフ)についても作成することができた.因果グラフを作成した結果,地力の減耗は,年次経過により各施用要素の効果が影響を受けた結果もたらされていることが示唆された.地力,窒素,りん酸,カリの効果は収量へ直接に影響を及ぼしていることが考えられたが,品種変遷等を含めた年次経過も収量へ直接に影響を及ぼしていることが示唆された.また石灰の効果については,ほとんど直接的には収量へ影響を及ぼしていないことが示唆されたが,石灰の効果が他の施用要素の効果へ影響を及ぼすことにより間接的に収量へ影響を及ぼしていると考えられた.

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© 2010 日本作物学会
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