2010 年 79 巻 4 号 p. 528-535
原麦粗タンパク質含量の高いビールオオムギ生産が指摘されている栃木県那須地方において,ビールオオムギの高品質安定生産を目指し,生産現場の課題を調査した.はじめに,オオムギ縞萎縮病について調査を行った結果,その発生率は63.0%(抵抗性品種を除くと70.5%)と蔓延化していることが判明した.オオムギ縞萎縮病を回避し,収量および原麦粗タンパク質含量の安定のためには,スカイゴールデン等抵抗性品種の作付けを進める必要があると考えられた.次に,生産者履歴等を解析した結果,原麦粗タンパク質含量は播種期や収穫期と正の相関,リン酸施用量と負の相関が認められ,収量はpH改良資材施用,茎立期前の麦踏の実施等により向上することが明らかとなった.加えて,適期播種,リン酸改良資材やpH改良資材の施用等の基本技術の励行は約半分程度しか行われていないことが判明し,その結果,原麦粗タンパク質含量,子実重等のばらつきが大きくなり,また原麦粗タンパク質含量の高いビールオオムギ生産の原因となる可能性が考えられた.その改善と安定した生産の確保には,適期播種,リン酸改良資材やpH改良資材の施用,茎立期前の麦踏等の励行が必要である.