日本作物学会紀事
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品質・加工
タンパク質含量がコムギのポリマータンパク質の量と分子量分布に及ぼす影響
谷中 美貴子高田 兼則池田 達哉石川 直幸
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2011 年 80 巻 1 号 p. 77-83

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抄録
タンパク質含量がポリマータンパク質の量と分子量分布に及ぼす影響を,生地物性の異なるコムギ4品種を用いて,サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより分析した.タンパク質含量の増加に対し,主にグリアジンを含む,可溶性モノマータンパク質が最も増加した.ポリマータンパク質の中では,重合度の低い可溶性ポリマータンパク質が,重合度の高い不溶性ポリマータンパク質よりも増加した.生地物性の強さの指標となる,不溶性ポリマータンパク質の全タンパク質,全ポリマータンパク質に占める割合(UPP(%),UPP/TPP(%))や,タンパク質含量の増加に対するSDS沈降価の増加程度は,品種間で有意に異なり,タンパク質含量の増加に対する生地物性の向上程度が品種間で異なることが示唆された.これらの品種間差異は,タンパク質含量の増加に対して,可溶性あるいは不溶性ポリマータンパク質の増加程度が品種間で異なることに起因すると考えられた.ふくさやか,ニシノカオリでは,ミナミノカオリ,農林61号と比べて,全ポリマータンパク質の全タンパク質に占める割合や,UPP(%),UPP/TPP(%)が有意に低く,また,タンパク質含量の増加に対し,可溶性ポリマータンパク質の増加程度が大きく,不溶性ポリマータンパク質の増加程度が小さい傾向にあった.これらの品種ではGlu-A1座のグルテニンサブユニットが欠失しており,増加したタンパク質におけるグルテニン重合度の違いは,主にGlu-A1座のグルテニンサブユニットの有無に由来する可能性が考えられた.
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© 2011 日本作物学会
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