日本作物学会紀事
総 説
米国・カナダ・オーストラリア・EUおよび日本における 環境ストレス耐性遺伝子組換え植物の環境影響評価の現状
吉村 泰幸松尾 和人
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81 巻 (2012) 2 号 p. 137-147

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抄録

環境ストレス耐性遺伝子組換え植物は,将来の人口増加や地球の温暖化に伴う気候の変動に対して安定的に収量を確保する手段として期待されている.しかしながら,環境ストレスに対する耐性という特性は,これまで認可された除草剤耐性および害虫抵抗性と比較して,植物の適応度や自然環境に侵入する能力に影響を及ぼす可能性があり,環境ストレス耐性を付加された植物が,遺伝子導入前の宿主植物よりも大きな生態的地位を占める可能性が指摘されている.現在,このような新しい遺伝子組換え植物の環境に対する影響評価方法について国際会議等で議論されているが,確定的な答えは未だない.日本を含む米国,カナダ,オーストラリア,EUにおいては,環境ストレス耐性遺伝子組換え植物の野外試験が既に開始されており,本論文では,これらの国が,環境ストレス耐性遺伝子組換え植物の自国への導入に対しどのような法的枠組みの中で,どのような環境に関する安全性評価を行うのかを,各国の農業的な背景とともに整理した.その結果,環境ストレス耐性遺伝子組換え植物の環境影響評価については,各国ともに,現行の評価システムをそのまま適用する,あるいは,その枠組みの解釈を拡大し,新しい手法を付加しながら,評価していく方針であると考えられた.現在提案されている新しい評価手法の一つに植物個体群動態モデルを取り入れた方法があるが,近い将来,このような手法を用いた環境ストレス耐性遺伝子組換え植物そのものを用いた研究によってその評価方法の妥当性が検討され,標準となる手法が確立されていくものと考えられる.

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© 2012 日本作物学会
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