日本作物学会紀事
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栽培
重粘質土壌において石灰窒素の基肥施用が水稲の収量性と玄米外観品質に及ぼす効果
大角 壮弘平内 央紀松村 修
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2013 年 82 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

石灰窒素の基肥施用は稲こうじ病の発生抑制に効果があるものの,肥効が長いとされる石灰窒素がその後の水稲の生育や収量・品質にどのような効果を示すのか十分には明らかではない.本研究では重粘質土壌水田において2010年より2か年にわたり,速効性窒素肥料の分施区 (慣行区) と石灰窒素を全量基肥施用した区 (石灰窒素区) を設け,収量性および玄米外観品質を比較・評価した.施肥窒素量はいずれの区も4 g m-2とし,品種はコシヒカリを用いた.重窒素標識した石灰窒素の吸収量を調査したところ,石灰窒素の肥効は少なくとも幼穂形成期までは持続することが明らかとなり,穂揃い期までの施肥窒素利用率は9.1~17%であった.石灰窒素区では両年とも有意な登熟歩合の低下がみとめられ,低日射により登熟期乾物生産量の小さかった2011年には玄米外観品質の低下が観察された.登熟歩合と玄米外観品質の石灰窒素区での低下は,いずれも幼穂形成期以降の窒素吸収量が慣行区に比べ小さく,穂揃い期の栄養状態が良好でなかったことが要因と推察された.このことから,重粘質土壌で石灰窒素を基肥施用した条件で,慣行の施肥体系と同等の生育・品質を確保するためには,適切な時期に穂肥を施用する必要があると考えられた.

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© 2013 日本作物学会
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