2013 年 82 巻 1 号 p. 42-48
高温登熟条件下における米粒の胴割れ発生の品種間差異を明らかにする目的で,夏期が高温となる瀬戸内地域において多数品種を供試した圃場試験およびポット試験を行った.水稲20品種を2008年からの3年間で計7回圃場で栽培し,胴割れ率を調査した結果,過去の報告と同様に登熟初期の気温が高い条件で胴割れ率が高まることが確認された.品種間で発生程度を比較した結果,双葉,ヤマヒカリ,藤坂5号はいずれの年次・作期においても胴割れ率が高かった.また,はなの舞,ハナエチゼン,にこまる,ひめのまいは,登熟初期の気温が比較的低い条件では胴割れ率が低かったものの,高温条件となった年次・作期では発生が大きく増加した.一方,中国由来の品種である塩選203号は,高温条件となる年次・作期においても胴割れの発生が少なかった.出穂期以降の気温推移を品種間で同一条件とし,登熟初期に高温処理を行ったポット試験を2009年に行った結果においても,塩選203号は胴割れ率が他の品種と比較して有意に少なかった.以上の結果より,塩選203号は高温登熟条件下でも高い胴割れ耐性を発揮することが明らかになった.