日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
紫黒糯米品種「紫宝」における篩い下米のポリフェノール含量と加工特性
小林 和幸城斗 志夫福山 利範
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2013 年 82 巻 2 号 p. 192-196

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抄録

紫黒米の生産現場で一定量発生する粒厚1.85 mm未満の米粒(一般には篩い下米あるいは屑米と称される)を,米加工食品産業界へ安価に提供することを前提とし,新潟県が開発した紫黒糯米品種「紫宝」を用い,粒厚別にポリフェノール含量と熱糊化特性を調査して,その加工特性を評価した.「紫宝」の米粒1粒あたりのポリフェノール含量は,粒厚1.85 mm以上の精玄米に比べ,1.85~1.70 mmの米粒で26.1%,1.70 mm未満の米粒で54.3%低下した.したがって,粒厚1.85 mm未満の篩い下米を一般食用米に添加して利用する場合,精玄米並のポリフェノール含量を確保するためには,通常量より30~50%程度増量する必要があると考えられた.単位重量あたりに換算した場合,1粒あたりより,ポリフェノール含量の低下率が低く,篩い下米を米粉として利用する場合には,10~25%程度の増量で精玄米並のポリフェノール含量を確保できると考えられた.一方,玄米のタンパク質含有率は,粒厚が薄くなるにつれて高まり,粒厚1.70 mm未満の米粒では8.6%に達した.また,精玄米に比べ,粒厚1.85 mm未満の篩い下米の糊化開始温度および各種粘度特性値は低く,餅生地の硬化性や澱粉の膨潤能,ゲル強度,老化性は低いと推定され,加工利用時に注意を要すると考えられた.生産現場で一定量発生する篩い下米を原材料として米加工食品産業界に提供するためには,こうした加工利用上の留意点を製造現場にあらかじめ十分に伝達すること,生産流通体制を整備することが重要と考えられた.

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© 2013 日本作物学会
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