日本作物学会紀事
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品質・加工
遮光と高温処理が水稲玄米の粒厚分布・外観品質・食味に及ぼす影響
-2009年と2010年の比較-
石突 裕樹菊川 裕幸齊藤 邦行
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2013 年 82 巻 3 号 p. 242-251

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抄録
日本晴とヒノヒカリを供試し,岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターの水田で対照区,遮光区,高温区を設けて,2009年と2010年(夏季高温年)に圃場栽培を行った.高温処理は水田内に側面自動開閉装置を装着したビニールハウス内で栽培を行い,出穂期以降ハウス内の気温が36℃以上で開放,25℃以下で閉鎖するように制御し,遮光処理は出穂期以降黒色寒冷紗(遮光率50%)で群落上層を被覆した.2009年,2010年の収量は対照区に比べ,それぞれ高温区で登熟歩合と千粒重の低下により10–21%,30–33%,遮光区で登熟歩合の低下により16–24%,32%の減収が認められた.2009年に比べ高温であった2010年は千粒重が低下したにもかかわらず,粒厚はより大きい側に分布する傾向がみられた.対照区に比べ,高温区では2009年は粒厚がより大きい側に分布したが,2010年は逆にやや小さい側に分布する傾向を示し,遮光区では両年ともに粒厚がより小さい側に分布する傾向がみられた.高温は玄米の肥大成長を促進し,遮光は抑制すると考えられた.両品種ともに粒厚が小さくなるほど整粒割合が低下し,白未熟粒割合が高まった.2010年には,粒厚が大きくなるほど基白粒割合が特異的に高くなった.炊飯食味計による食味値は日本晴に比べヒノヒカリで高く,粒厚が小さいほど食味値は低下する傾向を示し,その程度は日本晴に比べヒノヒカリで小さくなった.遮光区,高温区ともに食味値が対照区に比べ低下したが,その程度は日本晴で著しかった.食味値と白未熟粒割合との間には2009年には正の,2010年には負の有意な相関関係が認められ,これには食味値の高い粒厚の大きい玄米で基白粒が増加したことに起因すると考えられ,2010年にみられた基白粒の発生が食味に及ぼす影響は小さいと推察された.粒厚選別機の篩目を調節することにより,整粒割合,食味を調節できる可能性が示された.
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© 2013 日本作物学会
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