日本作物学会紀事
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栽培
緑肥レンゲ(Astragalus sinicus L.)を17年間連用した水稲収量と その変動要因
浅井 辰夫平野 清前田 節子飛奈 宏幸西川 浩二
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2013 年 82 巻 4 号 p. 353-359

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抄録

静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センターの水田において,緑肥レンゲを利用した水稲の無農薬栽培試験を早生品種を用いて17年間継続して実施した.試験区として,基肥に緑肥レンゲをすき込み,農薬を使わないレンゲ無農薬区(1993~2009年),レンゲをすき込むが農薬を使うレンゲ有農薬区(1999~2009年)および化学肥料と農薬を使用する化学肥料区(1993~2009年)を設定した.レンゲ無農薬区は,1993~2000年までの8年間は気象災害とニカメイチュウの被害が頻発して,水稲部分刈り平均収量は409 g m-2であったが,同被害がない2001~2009年の9年間の平均収量は466 g m-2 へと向上した.同期間のレンゲ有農薬区の平均収量が468 g m-2であり,無農薬でも有農薬と比べて遜色のない収量が得られた.化学肥料区は,1993~2000年の平均収量が517 g m-2,2001~2009年が539 g m-2で,試験期間中における収量の変動はレンゲ無農薬区ほど大きくはなかった.両レンゲ区では,2006,2007年および2009年に外来害虫のアルファルファタコゾウムシが多発したことによりレンゲ生産量が減少したことから,この3年間のレンゲ無農薬区の平均収量は414 g m-2と他の年より低かった.一方,アルファルファタコゾウムシが発生しなかった6年間の平均収量は493 g m-2で,化学肥料区の93%の収量が確保された.また,レンゲ生産量と水稲収量との間には,高い正の相関関係が認められた.レンゲすき込み区の生育の特徴は,化学肥料区に比べて初期生育が緩慢であることが明らかになった.

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© 2013 日本作物学会
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