抄録
佐世保市を中心とした長崎県北部中山間地水田において特異的に発生する水稲上位葉縁枯(以下「水稲葉枯症」と称する)の実態調査とその要因について検討した.1.「水稲葉枯症」が発生する中山間地は,平坦地に比べて日射量が20%程度少なかった.2.発症株は健全株と比べて地上部/地下部の乾物重比(以下「T/R比」と称する)が高い傾向にあった.3.慣行栽培より移植時期を遅くすることにより発症程度を軽減することができた.4.発症前には梅雨明け前後の低気圧接近に伴う局地的な乾燥風が吹き始め,梅雨明け以降も乾燥風は継続し中山間地と平坦地との気温差,湿度差が拡大しやすかった.梅雨期間の日照不足に起因する地上部と地下部の生育バランスの悪化および中山間地特有の乾燥風による茎葉の蒸散作用の促進が新しく展開した葉の水分欠乏を引き起こし,「水稲葉枯症」をもたらすことが示唆された.