愛媛県におけるハダカムギの播種適期は11月中下旬であるが,気象条件などの影響により適期播種が出来ないことがある.本研究では,ハダカムギ品種マンネンボシを適期より約30日遅く,晩播きした場合における,窒素施用法の違いが収量と品質に及ぼす影響について検討した.窒素施用量は適期播区では,成分量で基肥7 g m-2,中間追肥2 g m-2,穂肥3 g m-2とし,晩播区ではさらに基肥7,9 g m-2,中間追肥0,2 g m-2,穂肥3,5 g m-2を組み合わせた各処理区を設けた.その結果,晩播区ではおもに穂数の不足により適期播区より12~45%(3ヶ年平均28%) 減収した.晩播区の中では,総窒素施用量を14 g m-2以上に増やした区では穂数の減少を抑制でき,適期播区対比で平均77%の収量をあげることができた.また,晩播区では遅れ穂が発生し,細麦率と硝子率が高く,精麦白度が低くなるなど品質が低下し,特に穂肥5 g m-2区でその傾向が強かった.それゆえ晩播きにおいて収量を確保し,かつ品質低下を防ぐには,初期生育を促進し,穂数を確保することが重要で,生育初期に窒素の肥効が十分に発揮できるような施用法がよいと考えられた.すなわち,晩播きの場合,適期播きよりも基肥を増量した基肥9 g m-2,中間追肥2 g m-2,穂肥3 g m-2の施用が適当と考えられた.