2015 年 84 巻 1 号 p. 9-16
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い飛散・降下した農地土壌の放射性セシウムを除去する目的で,福島県川俣町において2011年から2013年に渡りアマランサスを現地栽培試験し,植物体の放射性セシウム濃度および乾物重を計測し,ファイトレメディエーションの可能性を検討した.アマランサスの放射性セシウム濃度は3カ年ともに対照としたケナフより明らかに高かったが,アマランサス内の種間差は認められなかった.また,田圃場と畑圃場では,田圃場で栽培したアマランサスの放射性セシウム濃度が明らかに高く,これは田圃場における土壌中の低い交換性カリウム含量の影響が考えられた.一方,アマランサスの乾物重は畑圃場の方が高かった.部位別の放射性セシウム濃度では葉の濃度が高く,種子の濃度が低かった.アマランサスによる放射性セシウムの移行係数は0.020から0.354の範囲にとどまり,チェルノブイリ原子力発電所事故に伴う汚染地におけるアマランサスの移行係数より低かった.土壌からの除去率も0.019%から0.283%の範囲と低かった.これらは,放射性セシウムが土壌中に固定されアマランサスによる吸収が困難となっていることが一因と推察された.以上から,アマランサスによる放射性セシウムの効率的なファイトレメディエーションは困難であると考えられた.