日本作物学会紀事
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栽培
不耕起播種を基軸とする水田輪作における減肥体系が収量性および 土壌の化学性に及ぼす影響
渡邊 和洋松﨑 守夫松尾 和之渡邊 好昭
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2015 年 84 巻 2 号 p. 162-175

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抄録

不耕起播種栽培を基軸とする水田輪作体系において,コムギの播種前に十分量のリン酸を熔成リン肥で施用するとともに,コムギとオオムギにカリを追肥することで,ダイズおよび水稲については無リン酸,無カリ栽培とし,作付体系を通じた総リン酸,カリ施肥量を大幅に削減する施肥体系を立案し,これらが各作物の収量および土壌の化学性に及ぼす影響を4年間にわたって調査した.リン酸,カリを慣行施肥量のそれぞれ55~80%,30~55%(移植水稲の施肥体系を対照とすると,それぞれ45~66%,23~42%)にまで削減した場合でも,各作物の収量は,慣行施肥と同等を維持できた.一方,土壌の可給態リン酸も慣行施肥と同等を維持できたが,交換性カリは減肥施肥体系により低下した.したがって,カリの減肥率はやや緩和する必要があると考えられた.また,減肥の直接の影響ではないが,水田輪作の継続に伴いpHとCECが低下する傾向が認められ,アルカリ資材や有機物の施用を含めた効率的かつ持続的な施肥体系のさらなる検討が必要である.

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© 2015 日本作物学会
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