日本作物学会紀事
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栽培
ダイズ品種「サチユタカ」は7月上旬に播種しても6月中旬に播種したものに比べて百粒重が重く収穫指数が高くなることで減収しない
池尻 明彦高橋 肇
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2016 年 85 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

ダイズ品種「サチユタカ」は,2001年に採用された山口県の奨励品種である.山口県ではダイズは慣行栽培で6月中旬に播種するが,梅雨の雨で播種が7月にずれ込むことがある.本研究では,「サチユタカ」が7月上旬に播種すると6月中旬に播種したものに比べて収量および収量構成要素にどのように影響を及ぼすかについて明らかにした.さらに,それぞれの播種期でこれまでに山口県で慣行栽培されてきた品種と比較した.その結果,「サチユタカ」の収量は7月上旬に播種しても6月中旬に播種したものに比べて少なくなることはなかった.7月上旬に播種したものは,6月中旬に播種したものに比べて稔実莢数が少なく,全重が軽かったものの,百粒重が重く,収穫指数が高かった.6月中旬に播種したものも,7月上旬に播種したものも,収量は,稔実莢数だけでなく,1莢粒数や百粒重との間に高い正の相関関係を示した.7月上旬播種での栽培環境は,6月中旬播種のものと比べて結実期間中の平均気温が低く,7月上旬播種で百粒重が重く,減収しなかった一因と考えられた.なお,6月中旬に播種したものは,従来の品種「タマホマレ」,「ニシムスメ」,「オオツル」よりも多収になる傾向を,7月上旬に播種したものも,従来の品種「フクユタカ」よりも多収になる傾向を示した.

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