日本作物学会紀事
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栽培
塩分布の異なる土壌における灌漑方法と苗齢の違いがイネの生育と収量に及ぼす影響
掛橋 孝洋津田 誠平井 儀彦
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キーワード: イネ, 塩土壌, 間断灌漑, 乳苗,
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2016 年 85 巻 2 号 p. 115-121

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抄録

乳苗移植と間断灌漑の導入により,非塩土壌ではイネの生育収量が高まったと報告され,塩土壌では低くなったと報告されているので,塩土壌におけるこれらの技術の問題を検討するために研究を行なった.容量15 Lのポットに土壌全層に塩化ナトリウム(塩)45 g を添加する区(均一区),同量の塩を下層のみに添加する区(不均一区),塩を添加しない区(無塩区)を設け,水稲品種日本晴をポット当たり1個体移植した.苗は葉齢2.5と4.7の乳苗と中苗を用い,移植後の灌漑法は常時湛水と間断灌漑で,それぞれ湛水区と間断区とした.その結果,無塩区の茎数,穂数,地上部乾物重は乳苗移植のみで湛水区より間断区で大であった.登熟歩合は乳苗,中苗移植ともに間断区で湛水区より小であった.このため精籾重は,乳苗移植では間断区と湛水区の間に有意な差はなく,中苗移植では間断区で湛水区より小であった.均一区の乳苗は二つの灌漑法で枯死したのに対して,中苗は間断区で乳苗より生存期間が長く,湛水区で成熟まで生育した.生育収量は均一区より不均一区で高かったが,乳苗,中苗移植ともに間断区で湛水区より著しく小であった.湛水区で土壌塩分布はあまり変わらなかったものの,間断区では初期の塩分布にかかわらず上層に塩分が集積した.乳苗は耐塩性が小さく,間断灌漑は土壌上層に塩分を移動させるため,乳苗移植,間断灌漑は塩土壌に適しておらず,移植時の土壌上層の塩分濃度を低くし,湛水条件を維持することが塩土壌により適していると考えられた.

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