日本作物学会紀事
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栽培
葉面散布による種子中モリブデン(Mo)の富化がダイズ (Glycine max L. Merr.)の根粒超着生系統の根粒着生,窒素固定,生育ならびに収量に及ぼす影響
浜口 秀生渡邊 和洋松尾 和之梅本 雅高橋 幹渡邊 好昭伊藤 一幸
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2016 年 85 巻 2 号 p. 130-137

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抄録
モリブデン(Mo)は豆類の根粒窒素固定に必須の元素である.ダイズは生育初期に必要なMoを種子に依存しており,生育初期から根粒を多量に着生する根粒超着生ダイズは普通の根粒着生を行う品種に比べ多くのMoが必要と考えられる.これまで行われた超着生ダイズの圃場研究では種子のMo含量は考慮されなかった.そこで本研究では,種子のMo含量富化が超着生ダイズの生育と収量に及ぼす影響を検討した.Mo含量富化種子は,前世代のR5(子実肥大始期)にモリブデン酸ナトリウムの0.3 g L-1水溶液を散布量100 mL m-2で2度, 葉面散布して生産した.エンレイとその超着生変異体En6500と改良された超着生系統のEn-b0-1と関東100号についてMo含量富化種子(5.5-15.1 mg kg-1)と対照種子(0.3-2.2 mg kg-1)に由来する植物体の根粒着生,窒素固定,収量を比較した.超着生系統ではMo富化種子由来の植物体は対照種子由来のものに比べ個体当たりの根粒着生量は少ないが,根粒のMo含量が高く,茎乾物のウレイド含量も高かった.Mo富化種子由来の植物体の収量は対照の1.3から2倍であった.エンレイではMo富化種子と対照種子に由来する植物体の間に根粒着生量の差はなかったが,前者の収量は後者より10%まさった.種子Mo富化は超着生ダイズの超着生を部分的に抑制し,生育,収量を大幅に改善すると考えられた.
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© 2016 日本作物学会
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