日本作物学会紀事
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栽培
異なる生育時期の冷水掛け流し処理が湛水直播水稲の出芽と苗立ちに及ぼす影響
田中 英彦山崎 信弘
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2016 年 85 巻 3 号 p. 241-245

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抄録
湛水直播水稲実生の低温感受性が最も高い時期を特定するために,ほぼ11℃で一定の冷水を掛け流した冷水田を用い,播種直後,出芽揃い期,第2葉抽出期の3処理開始時期について,各7日間と14日間の冷水処理を行った.種籾は水稲マット苗用育苗箱に播種し,無処理水田と冷水田を適宜移動して処理を行った.冷水処理期間中の平均水温は,各処理とも12℃未満であった.苗立ち率は,出芽揃い期からの処理で最も低く,次いで第2葉抽出期からの処理で低かった.処理前後の出芽個体を出葉程度ごとに分類して,各処理による苗立ち率の低下の要因について検討した.その結果,播種直後からの処理における苗立ち率の低下は,主に出芽率の低下によると考えられたのに対して,出芽揃い期からの処理では出芽した個体が第1葉を抽出できるかどうかが,第2葉抽出期からの処理ではそれに加えて本葉を抽出した個体の生存率がそれぞれ苗立ち率の低下に影響したと考えられた.以上から,低温処理を行った場合に最も苗立ち率が低下したのは,出芽個体の第1葉抽出率が低下した場合であり,低温に対する感受性が最も高い時期は,出芽後第1葉の抽出前,すなわち鞘葉の伸長期と判断された.
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© 2016 日本作物学会
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