日本作物学会紀事
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栽培
近畿地方の晩期乾田直播に適した非構造性炭水化物の茎部高蓄積特性および耐倒伏性を有するホールクロップサイレージ用飼料イネ品種
田中 貴北脇 由布子広岡 博之稲村 達也
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2017 年 86 巻 3 号 p. 229-235

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抄録

日本の食料自給率向上のために,ホールクロップサイレージ(WCS)用飼料イネの栽培による飼料増産が期待されている.そこで,土地利用率や収益を向上し,生産コストや作業の競合を低減させるために,水稲−麦類の二毛作体系において,WCS用飼料イネの晩期直播栽培の導入が有効と考えられる.WCS用飼料イネは,籾のみならず茎および葉鞘(茎部)に多くの非構造性炭水化物(NSC)を蓄積することが消化性の向上のためにも重要であり,直播栽培においては耐倒伏性も重要となる.そこで,WCS用飼料イネの実用品種を含む8品種の栽培試験を2年間行い,晩期乾田直播条件下での,収量,NSC蓄積,耐倒伏性の品種特性を調査した.地上部乾物重に占める穂重の割合が小さい品種では,黄熟期には子実への同化産物の蓄積が停滞するため,高濃度のNSCを茎部に蓄積すると考えられた.一方,そのような品種は,在圃期間が長いため,冬作である麦類の作期と競合する可能性がある.しかし,品種によっては,糊熟期に収穫することにより,在圃期間が短くとも,茎部に高濃度のNSCを蓄積する可能性があると考えられた.さらに,糊熟期では, 地上部乾物重に占める穂重の割合が小さいことからも,黄熟期に比べて倒伏が起きる危険性は低くなると考えられた.

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© 2017 日本作物学会
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