日本作物学会紀事
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栽培
休眠を持つ水稲種子の発芽とα-アミラーゼの発現に及ぼす浸種条件の影響
板谷越 重人岩津 雅和水沢 誠一福嶋 朗山渋川 洋三ツ井 敏明
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2021 年 90 巻 3 号 p. 269-276

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抄録

水稲種子がもつ休眠は品種や年度によって深くなる場合があり,そのために発芽の不斉一がしばしば生じ,育苗に支障を来している.そこで,育苗前の種子予措として一般に行われている浸種処理について,浸種水温と期間を変えた場合にこれらの条件がその後の発芽に及ぼす影響を比較することで,種子を斉一に発芽させるために最適な浸種条件を検討した.その結果,浸種水温が10℃もしくは12℃の場合,「コシヒカリ」は積算水温 (日平均気温×日数) 120℃・日以上,「こしいぶき」は80℃・日以上の浸種期間を経た後の発芽試験で90%以上の発芽率が得られ,休眠の深い「五百万石」も浸種期間が長いほど発芽率が上昇することが明らかとなった.浸種後に育苗床土に播種した場合でも,浸種期間が長いほど,正常に出芽した粒数および緑化後の芽の長さが上昇した.一方,浸種水温が5℃の場合,浸種期間を長くすることによる発芽率の上昇は認められず,設定した浸種期間60℃~140℃・日の全てで「コシヒカリ」および「こしいぶき」は90%以下,「五百万石」は50%以下と,浸種水温10,12℃を下回る発芽率を示した.異なる浸種水温および期間におけるα-アミラーゼのアイソフォームごとの発現をウェスタンブロッティングにより確認したところ,浸種水温12℃および5℃ともに浸種中にAmyII-4の発現がみられ,その浸種期間による増減の推移は水温によって異なることが確認された.

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