2022 年 91 巻 1 号 p. 59-66
本研究では,稲発酵粗飼料用として普及が進んでいる極短穂性の水稲の品種について,収穫時期による飼料成分含有率の把握とその変動要因を明らかにすることを目的とした.西日本農業研究センター(広島県福山市)において,2017年に極短穂性の「たちあやか」を2作期に分けて栽培した.また,2018年に早晩性の異なる「つきはやか」,「つきあやか」,「つきすずか」および「つきことか」の4品種を栽培し,出穂期から出穂期後70日の地上部乾物重,飼料成分含有率を調査した.その結果,出穂期後の飼料成分含有率は,出穂期から出穂期後30~40日にかけて大きく変動し,特にCP(粗タンパク質)やADF(酸性デタージェント繊維)の含有率は低下する一方で,CA(粗灰分)やヘミセルロースの含有率の変動は小さく,また,NFC(非繊維性炭水化物)の含有率は上昇した.地上部乾物重はいずれの作期・品種ともに出穂期後30~40日に最大に達したが,全作期・品種を平均すると出穂期後の地上部乾物増加量の71%をNFC,19%をヘミセルロース,8%をCA の乾物増加量が占めた.以上のことから,出穂期後の飼料成分含有率の変動は,主にNFCの乾物増加によるものであり,NFC乾物重の増減が小さくなる出穂期後30~70日の飼料成分含有率は安定した.