2026 年 95 巻 1 号 p. 18-27
パン用小麦 (Triticum aestivum L.) を水田転換畑で安定的に高品質で栽培する方法を確立するため,前作物の違いがパン用小麦品種「ゆめかおり」の収量と製パン適性関連形質に及ぼす影響を調査するとともに,施肥体系の効果について検討した.大豆後小麦は水稲後小麦より多収で,子実タンパク質含有率とSDS沈降量が多く,製パン適性が高いと示唆された.大豆後,水稲後ともに,開花期の窒素追肥によって子実タンパク質含有率とSDS沈降量が増加し,子実タンパク質含有率とSDS沈降量の関係は大豆後と水稲後で異ならなかった.このことから,いずれの前作でも追肥によって子実タンパク質含有率を高めれば製パン適性は同程度に向上すると推測された.加えて,容積重と子実灰分含有率も大豆後小麦と水稲後小麦で異ならず,前作を1作のみ畑作物である大豆としただけでは製パン適性の改善は限定的であった. また大豆後小麦では,長稈化による倒伏が発生し,倒伏による子実灰分含有率の上昇が見られる場合や,窒素施肥量の多い栽培では子実タンパク質含有率が基準値の上限を上回ってしまう場合があることも示された.大豆後圃場でのパン用小麦栽培においては,倒伏防止と子実タンパク質含有率の制御の観点から,水稲後圃場より窒素施肥量を抑制する必要があると考えられた.