日本作物学会紀事
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作物の登熟機構に関する生理的研究(摘要) : 登熟期の稲種実内に於ける Q-酵素について
相見 霊三村上 高
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1958 年 26 巻 4 号 p. 245-247

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抄録
フォスフォリラーゼで生成される澱粉は直鎖のアミロースのみであるが, 稲の梗澱粉はアミロースとアミロペクチンとが或る割合をもつて構成され, 糯澱粉は大部分がアミロペクチンとなつている. このように, 分枝した澱粉の生成には当然澱粉分枝酵素の存在が考えられるので, 澱粉分枝酵素を実証し, 登熟に際しての粳, 糯澱粉の生成機構を明らかにするため実験を行つた. 1. 水稲粳種子に Q-酵素と思われる酵素の存在をみとめた. 2. この酵素の登熟期における消長は, 生体重当りの活性では, 全期を通じて変化なく, 粒当りの活性に換算すると, はじめはよわく, 次第につよくなることがわかつた. 即ちこの酵素は, 種実の乾燥とは関係なく, 種実の発達と共に強くなつて行くもので, 水稲アミラーゼと同じ型に属するもののようである. 3. 糯の品種にも Q-酵素は存在するが, 粳と大差のない強さであつた. 従つて糯品種の, アミロペクチソのみを集積する機構は単に Q-酵素の量的なものによつて規定されるようなものではないようである. 従つて今後フォスフォリラーゼと Q-酵素の量的関係, 質的差異, 又はそれぞれの活性の場における物理的, 化学的状態を, よりミクロに究明しなくてはならない.
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