日本作物学会紀事
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東南アジアを主とする世界における大豆品種の分化に関する研究 : 第2報 夏秋大豆性及び草性の分布より見た大豆栽培の起原と伝播
永田 忠男
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1959 年 28 巻 1 号 p. 79-82

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抄録

前報その他で報告した夏秋大豆性及び草性についての大豆品種の分布より, アジアでは華北, 華中を中心として, 満州にいたる満州傾斜品種系, 朝鮮より北日本にいたる日本全季作物傾斜品種系, 台湾, 硫球を経て南日本にいたる日本短季作物傾斜品種系及びベトナム, マレイを経てインドネシアにいたる印度支那傾斜品種系を設定した. そしてこれらの傾斜品種系の末端に, 生態的及び地理的隔離のかなり完成されている品種群を(1)満州生態型, (2)北日本生態型, (3)南日本生態型, 4)印度支那生態型と名付けた. これらの生態型及びその近似種の分布は, 近世における大豆の伝播の結果とかなりよく一致している. 従って, これらの分布よりいまだに疑問とされている大豆栽培の起原地並に古代における伝播の経路を考察することは, ある程度の推論の根拠があるものと思われる. その結果, 大豆栽培の起原は満州ではなくて, 中国本土, とくに華北, 華中にあるものと思われる. 日本への伝播の経路については, 華北より朝鮮を経て北日本にいたる経路を主とし, 外に華中より直接に南日本にいたる経路も考えられ, さらに栽培品種の相似により, 華中, 華南より, 台湾, 硫球を経て南日本にいたる経路も, 大豆品種の渡来と関係あるものと思われる.

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