抄録
落花生の雄ずい筒の特定位置に発生する, "sterile filaments" の形態的性状と, その発生程度の品種や開花呼期による差異をみるため, 開花始から約100日間, 千葉中粒43号, セレベスの二品種, 約23,000の花について調査を行なつた. 1雄ずい群内の, 正常雄ずい (f. st. ) と "sterile filaments" (ster. fil. ) との数的関係からみると, 両品種ともに "8 f.sf.+2 ster. fil." の花が最も優勢な出現をみたが, その頻度は, ついで多く出現する "9 f.st.+1 ster. fil." の花の頻度に支配され, 最も正常な型というべき, "1O f.st.+O ster. fil." の花はほとんど無視できる程度の出現をみたにすぎない (Tab. 2). また, それぞれの花の出現頻度間に相当顕著な品種間差異を認めたが, それらの時期的変化においても同様な品種的特性を認めた (Fig. 3). かかる本種における ster. fil. の発生は, 品種のみならず, 特に雄ずい分化期における植物の生理的, 環境的条件にも影響されることがうかがわれ, これがまた, 従来の記載における本種の雄ずい数の相違の一因となつていることが推察された.