抄録
(1) 種子を20℃で48時間吸水せしめ鳩胸程度に催芽せしめてのち直ちに風乾する(催芽・乾燥処理)か, あるいは催芽せしめた種子を5~10℃の低温下に10~20日間放置しておいたのち, これを風乾する(催芽・低温処埋・乾燥)と, 無処理種子に比して発芽が顕著に促進される. 発芽速度は催芽・低温処理・乾燥>催芽・乾燥>無処理種子の順に明らかに三つの段階を示す. しかもその発芽の促進は水中発芽よりも0.25M, あるいは0.45Mの蔗糖液を発芽床とせる場合に拡大される. (2) 催芽・低温処理・乾燥の処理を行う際に水の代りにジベレリン溶液(1~10ppm)を利用すると, 水を用いた場合に比して発芽, 発根ともに著しく促進される. これらの処理を行わないで, 普通乾燥種子を水中で発芽せしめた場合とジベレリジ溶液内で発芽せしめた場合とを比較すれば, ジベレリンによる発芽の促進は極めて僅かである. しかし催芽および低温処理期間中にジベレリンを供給すると, その発芽促進効果が顕著に発現する. (3) ジベレリンのみでなく, thiamine(ヴイタミン B1)を同様にして供給するとやはり発芽を促進する効果が見られ, これらの単独処理よりジベレリン+B1の方がさらにやや効果が大きい. しかしB1の発芽促進効果は発芽時の温度によつて異なるようで, 比較的低温下ではB1の効果があるが, 高温下では効果が見られない. (4) 上記以外の植物ホルモン物質についても若干検討したが, ジベレリンに優るものはなかった.