日本作物学会紀事
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ダイズの子実生産機構の生理学的研究 : 第1報 開花期間中の肥料要素欠除が体内成分ならびに子実生産におよぼす影響
昆野 昭晨
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1967 年 36 巻 2 号 p. 238-247

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抄録
ダイズの子実生産に対する各肥料要素の役割を明らかにするために, 自動灌漑礫耕装置を用いて, 開花期間中だけ主な肥料要素の各一つを欠除させた試験を行ない, 次の結果を得た. 1) 開花期間中NまたはCaの供給を中断すると, 生育が大きくおさえられ, 落花・落莢率が高まり, 子実生産も影響された. 各肥料要素の欠除で, 一般に地上部の生育が根の生育よりも大きく影響された. しかし, NとCa以外の要素欠除では生育や子実生産に対する影響は大きくなかった. 2) 処理によって, 欠除した要素の体内の含量, 含有率は大きく低下した. N欠除ではさらにCaとMgも低下した. 一般に成分的に大きく影響された器官は葉身と葉柄であった. 3) それぞれの要素の欠除状態にあるとき, N, Ca, Mgは対照区に比らべて根にとどまる割合が多く, PとKは地上部に配分される割合が高かった. 4) Ca含有率と落花・落莢率との間に高い負の相関が認められ, Caが莢の形成に重要な役割を持っていることが示された. すなわち, 低Caで落花・落莢が高まり, 粒数が減少し, これが子実生産に影響した. 5) 地上部栄養器官で, K, Ca, Mgの間に相補的な関係が認められ, これら要素の吸収と分布は相互に関係しあっていることが示された. 6) 要素欠除植物への欠除要素の葉面散布は, 多くの場合その含量, 含有率を高め, とくにCa欠除植物へのCa散布は子実生産に対するCa不足の悪影響を若干軽減した. しかし, N欠除植物へのN散布はかえって生育が抑えられ, 全粒重も軽く, Nの葉面散布を有効にするには一定の条件が必要であることが示唆された. 7) 開花期間中のK, MgまたはPの欠除で生育や子実生産への影響が小さかったのは, これら要素が体内で再移行し易いためと思われる. 一方NまたはCa欠除で影響が大きかったのは, これらがこの時期に多量に必要なことを示している. とくにCaは再移行しにくい形になることが欠除の影響を大きくしたと思われる.
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