日本作物学会紀事
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日本型水稲における種子の湿潤・高温処理と中茎の伸長促進
井之上 準穴山 彊伊藤 健次
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1970 年 39 巻 1 号 p. 54-59

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抄録
種子を高温処理することによつて, 暗黒下における日本型水稲の中茎の伸長はかなり促進されることが明らかにされたが, この場合, 必らずしも全処理個体において中茎の伸長が促進されるとはかぎらなかつた. そこで, 中茎の伸長促進に最も効果的な処理条件を見いだす目的で, 日本型水稲・ボウヨクを用いて, 種子 (玄米) の湿潤・高温処理による中茎の伸長促進について実験した. 種子は, 消毒後25℃の滅菌水中に一定時間浸漬した後, 種子表面の付着水を〓紙で除き, 小型ガラス管瓶 (13×100mm) 1個当り約20粒を入れ, 暗黒下, 定温器内で高温処理した. なお, 高温処理中の種子の水分含量の変動を防ぐ目的で, ガラス管瓶の上部は, ビニールで密封した. 上記の方法で湿潤・高温処理した種子を, 試験管1本当り2粒ずつ播種し, 暗黒下30℃で12日間, 無菌培養した. 結果の概要は, つぎの通りであつた. 1) 中茎の伸長に最も促進的に作用した温度は, この実験の範囲内 (60~25℃) では, 40℃であつた. 35℃処理においては, 伸長促進は処理個体の約半数においてみられたが, 30℃処理によつては殆んどみられなかつた. 一方, 60℃, 50℃処理では, 中茎が伸長促進される個体は非常に少なかつた. 2) 高温処理前の種子の浸漬時間の長短と中茎の伸長促進との関係を, 温度40℃-10日間処理でみれば, 処理前に種子を8~14時間浸漬した区が最も伸長促進が大きく, 無処理区の約50倍であつた. ところが, 16時間以上の浸漬区においては, 浸漬時間が長くなるにつれて中茎の伸長促進は小さくなり, 48時間浸漬区では処理個体の約3/4で中茎の伸長促進はみられなかつた. 3) つぎに, 最も中茎の伸長促進が著しかつた14時間浸漬区について, 40℃処理期間の長短の影響についてみれば, 中茎の伸長促進は40℃処理期間にほぼ比例して増大し, 15日間処理区でほぼ最高となつた. この区における中茎長は無処理区の約90倍であつた. しかしながら, 幼芽全長 (中茎長+鞘葉長) はl2~13日処理区でほぼ最高であつた. 4) なお, これらの場合, 40℃処理区の種子根長は無処理区の種子根長とほとんど差はないようであつた.
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