日本作物学会紀事
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水稲根の物理的強度に関する研究 : 第2報 根の強度と倒伏との関係
宮坂 昭
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1970 年 39 巻 1 号 p. 7-14

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抄録
根の強度と転び型倒伏および挫折型倒伏との関係を調査して次のような結果を得た. 1. 茎が土中に入らないように田植した場合に常時湛水区 (対照区) では登熟期に転び型に倒伏した. しかし, 早期中干区 (有効分げつ限界期から幼穂分化期まで排水), 晩期中干区 (幼穂分化期から出穂期まで排水) では, ともに対照区に比べ根数が少ないにもかかわらず, 転び型倒伏は認められなかつた. この理由は中干し期間に発育した根の強度が大きくなつたためであつた. 根の強度は, 同一要素では上位根に比べ下位根が, また各要素の間では第10要素 (下位よりの順位) (林料水稲北陸52号) が最も大であつた. 2. 第9要素と第10要素の根の強度の平均値と第3節間 (上位よりの順位) の稈の挫折重の関係を27品種について調査した結果, 両者の間に高い正の相関関係が認められた. また, 日本稲の17品種で調べた結果, 出穂20日前の根のα-ナフチルアミン酸化能力と登熟期の根の強度の間に正の相関関係が認められた. 3. 苗の根強度と登熟期の稈の強度との関係は, A : 根腐れ抵抗性の大きい外国稲群, B : 根腐れ抵抗性の比較的大きい日本稲群, C : 根腐れ抵抗性の小さい日本稲群, D : 〓形稲の4群に分類された. これらのうち, A・B二群においては苗の根強度と登熟期の稈挫折重の間にも密接な関係が認められた. 4. 水田の周辺に生育した水稲は水田の中心部に生育したものに比べ, 稈の強度のみでなく根の強度も大であつた. 5. 以上のことから, 登熟期の根の強度は転び型倒伏と関係をもつのみでなく, 稈の挫折重を通して挫折型倒伏とも密接な関係をもつと思われた.
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