日本作物学会紀事
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大豆の低温障害とくに開花期前後の低温と着莢との関係
斎藤 正隆山本 正後藤 和男橋本 鋼二
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1970 年 39 巻 4 号 p. 511-519

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抄録

ダイズは開花期間が比較的長いため,開花期にもろいろいな発育段階の花を含んでいる. また,落花・落莢に対する補償作用もきわめて強い. これらの特性のため,低温処理の開始時期によつて, また年次によつて低温障害の程度が非常にちがうことがある.そこでこの実験では主茎の10節以上と分枝を摘除し,発育程度の同じ主茎花のみをのこして低温処埋(15℃)をして,開花期前後における, 1)低温の最も敏感な時期の決定, 2)低温処理期間の長短による障害の程度, 3)低温時の花間競合, 4)低温処理にともなう体内諸成分の変化などを明らかにしようとした. 開花期前後の低温はいずれも結莢率, 一株粒重を低下させるが, 開花期まで続く開花前の低温はとくに影響が大きい. 低温処理はその期間の長いものほど結莢率, 一株粒中を低下させるが,開花までの処理日数が15日以上になると, とくにいちじるしい. 低温処理によるこのような結莢率の低下は主茎葉数を5枚にして,花数をわずか3個に制限した場合にも認められるところから, 同化産物などの供給低下を背景に考えられる花間競合はほとんど考えられない. また乾物重,全糖,還元糖,全窒素,燐酸などの含有率は低温処理によって,著しく影響を受ける. とくに燐酸含有率の変化は低温処理で著しく増加し,ガラス質に戻すと減少する. しかしこれら成分と結莢率の低下との間の直接的な因果関係は追究されなかった.

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